犬の尿トラブルってどんなもの?答えは、犬の尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に起こる様々な問題の総称です。私たち獣医師の現場では、尿路感染症から膀胱結石、さらにはがんまで、実に多様なケースを診ています。特に気をつけたいのは、「頻尿なのに量が少ない」「血が混じっている」といった症状。これらは尿路感染症の典型的なサインです。あなたの愛犬がこんな様子を見せたら、早めに動物病院へ連れて行ってあげてくださいね。私のクリニックでも先月、8歳のトイプードルが膀胱炎で来院しました。飼い主さんが「水を飲む量が増えた」と気付いたのが早期発見のきっかけでした。適切な治療で1週間ほどで回復しましたが、尿トラブルは放っておくと重症化するケースもあるので注意が必要です。
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犬の尿路は腎臓、尿管、膀胱、尿道で構成されています。これらの器官はお腹の中や後腹膜腔と呼ばれるスペースに収まっています。尿路の主な仕事は、血液をろ過して毒素を取り除くこと、ナトリウムやカリウムなどの電解質バランスを保つこと、そして体に必要な水分を再吸収することです。
ところで、「犬がおしっこをする姿ってなぜか可愛いですよね?」と感じたことはありませんか?実はあの動作には深い意味があるんです。排尿姿勢を取ることで、膀胱をしっかり空にしているのです。
尿路の問題は単純な感染症から深刻ながんまで様々です。特に注意が必要なのは以下の8つの症状です:
| トラブル種類 | 好発犬種 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 尿路感染症 | 全犬種 | 頻尿、血尿 |
| 膀胱炎 | 小型犬 | 排尿時の痛み |
| 膀胱結石 | ダルメシアン | 排尿困難 |
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膀胱や尿道に細菌が感染する病気です。特にメス犬に多く見られます。症状としては、トイレに行く回数が増えるのに、一度に出る量が少ない、血が混じっている、などがあります。
私の知り合いの柴犬「ポチ」ちゃんも去年UTIにかかりました。最初はただの水の飲み過ぎかと思っていたら、実は感染症だったんです。抗生物質で1週間ほどで治りましたが、早期発見が大切だと実感しました。
膀胱内に石ができる病気です。放置すると尿道に詰まって緊急事態になることも。特に注意が必要なのは、排尿しようとしても少ししか出ない、何度もトイレに行くけど出ていない、といった症状です。
なぜ犬に結石ができるのでしょうか?実は食事の内容や飲水量、体質などが関係しています。特にミネラルバランスの悪いフードを与え続けるとリスクが高まります。
多頭飼いの場合、どの子がどれくらい水を飲んでいるか分かりにくいですよね。そんな時は一時的に別々にして観察してみましょう。正常な排尿回数は1日3-5回が目安です。
私のおすすめは「トイレ日記」をつけること。時間と量をメモするだけで、変化に気付きやすくなります。スマホのメモ機能で簡単にできますよ!
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以下の症状が見られたらすぐに動物病院へ:
清潔な水をたっぷり与えることが基本です。特に夏場は水切れに注意!「うちの子はあまり水を飲まないんです」という相談をよく受けますが、そんな時は以下の工夫を試してみてください:
・水飲み場を複数箇所に設置する
・流水式の給水器を使う
・ウェットフードを混ぜる
尿検査は簡単で有効な検査です。ただし、採取した尿は2時間以内に検査する必要があります。朝一番のおしっこを持参するのがベスト!
検査項目としては:
・尿比重(濃縮力を見る)
・pH値(酸性度)
・タンパク質や糖の有無
・結晶や細菌の確認
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感染症の場合、抗生物質が処方されます。必ず指示通り最後まで飲ませてください。症状が消えても、体内に菌が残っていることがあります。
私のクライアントで「3日で良くなったから薬をやめた」という方がいましたが、1週間後に再発してしまいました。完治するまで治療を続けることが大切です。
結石の種類によって特別な療法食が処方されます。例えば:
・ストルバイト結石→尿を酸性化するフード
・シュウ酸カルシウム結石→カルシウム制限フード
市販の「尿路ケア」フードもありますが、まずは獣医師に相談しましょう。間違ったフードを与えると逆効果になることもあります。
治療後も定期的な尿検査をおすすめします。目安としては:
・治療直後:1-2週間後
・その後:3-6ヶ月ごと
・高齢犬:年2回以上
検査結果をファイルにまとめておくと、経過がわかりやすくなります。スマホで写真を撮っておくのも良いですね。
以下のポイントをチェック:
・1日の飲水量(体重1kgあたり50-100mlが目安)
・尿の色(薄い黄色が理想)
・排尿時の様子(痛がっていないか)
・トイレの回数
記録をつけることで、小さな変化にも気付けるようになります。愛犬の健康管理は日々の観察が大切です!
実はストレスが尿トラブルの原因になることを知っていますか?引っ越しや家族構成の変化などでストレスを感じると、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。
私の友人のトイプードルは、飼い主さんが転勤で引っ越した直後に膀胱炎になりました。環境の変化でストレスを感じていたんですね。犬にとっては、私たちが思っている以上に環境変化が大きなストレスになるんです。
適度な運動は膀胱の健康に欠かせません。散歩中にマーキングする行為は、実は膀胱を空にする良い機会なんですよ。
「うちの子はマンション住まいだから運動不足かも?」と心配になるかもしれません。でも大丈夫!室内でもできる簡単な運動があります。例えば、おもちゃを使った10分間の遊びや、階段の上り下りなど。1日2回、15分ずつ遊ぶだけで、膀胱の健康維持に役立ちます。
尿トラブルには季節によってリスクが変わります。冬場は寒さで水を飲む量が減り、夏場は脱水症状になりやすいんです。
| 季節 | リスク | 対策 |
|---|---|---|
| 春 | 花粉症によるストレス | 室内の空気清浄 |
| 夏 | 脱水・熱中症 | こまめな水分補給 |
| 秋 | 気温差による体調不良 | 保温対策 |
| 冬 | 水分摂取不足 | 温かいお湯を用意 |
子犬と老犬では、尿トラブルの原因が全く違います。子犬は免疫力が未熟で感染しやすく、老犬は臓器機能が低下してトラブルが起きやすいんです。
我が家のシニア犬(14歳)の場合、夜中のトイレ回数が増えたので、寝る前に必ず散歩に連れて行くようにしました。これだけで朝までぐっすり眠れるようになり、尿漏れも減りました。年齢に合わせたケアが大切ですね。
「犬が草を食べた後に吐くのは尿トラブルと関係ある?」と聞かれることがあります。実はこれは全く別の問題で、胃の不快感を和らげるための行動なんです。
でも、もし草を食べた後に排尿に異常が見られたら要注意。草に付着した農薬や化学物質が原因で腎臓にダメージを与えている可能性があります。そんな時はすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
診察時に聞いておくと役立つ質問をいくつかご紹介します:・現在の尿の状態は正常ですか?・どのくらいの頻度で検査を受けるべきですか?・家でできる予防策はありますか?・緊急時に見るべきサインは?
これらの質問をメモして持っていくと、診察がスムーズに進みますよ。私はいつもスマホのメモ帳に質問を書いておくようにしています。
トイレの場所や素材を変えるだけで、尿トラブルが改善することがあります。特に高齢犬の場合、段差をなくしたり、滑り止めマットを敷いたりするのが効果的。
私のクライアントさんで、トイレを2箇所に増やしたら頻尿が改善したケースがありました。犬も「ここなら落ち着いて用が足せる」という場所を好むんですね。
水を飲まない犬には、こんな工夫がおすすめ:・鶏肉の茹で汁(無塩)を水に混ぜる・氷を浮かべて遊びながら飲ませる・ウェットフードに水を加える
「うちの子、氷が大好きで!」という飼い主さんも多いです。冷たくて楽しいので、自然と水分補給ができるんです。夏場は特に効果的ですね。
最近、クランベリーエキスが犬の尿路健康に良いと注目されています。人間用と同じく、細菌が膀胱壁に付着するのを防ぐ効果が期待できるんです。
ただし、与える前に必ず獣医師に相談してください。犬用に調整された製品を適量使うことが大切です。我が家では獣医師推奨のサプリを毎日のフードに混ぜています。
特定の犬種が尿トラブルになりやすいのはなぜでしょうか?最新の研究では、遺伝子の変異が関係していることが分かってきました。
例えばダルメシアンは尿酸代謝に問題がある遺伝子を持っているため、結石ができやすいんです。愛犬のルーツを知ることで、予防策を立てやすくなりますね。
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A: 犬の尿路感染症の主な原因は細菌感染です。特に大腸菌が原因となることが多いですね。私たち獣医師が診察するケースでは、免疫力が低下している老犬や、糖尿病などの基礎疾患がある子に多く見られます。
また、メス犬は尿道が短いため、細菌が膀胱まで到達しやすいという特徴があります。予防法としては、清潔な水をたっぷり与えて排尿を促すこと。うちの患者さんで実践しているのは、1日に体重1kgあたり50-100mlの水を飲ませることです。水飲み場を複数設置するだけで、飲水量が増えたという報告もよく聞きますよ。
A: 膀胱結石の見分け方で重要なのは「排尿姿勢をとるのに出ていない」というサインです。私たちが診察する結石の症例では、犬が何度もトイレに行くのに、実際には少量しか出ていないことが多いです。
特に注意が必要なのはダルメシアンやミニチュアシュナウザーなど、結石ができやすい犬種。私の経験では、結石が疑われる場合、超音波検査が有効です。早期発見できれば、特別な療法食で溶かすことも可能です。ただし、尿道に詰まると緊急手術が必要になるので、怪しい症状が見られたらすぐに受診してください。
A: 犬の血尿から考えられる病気は様々です。私たちがよく診るのは膀胱炎や尿路感染症ですが、もっと深刻な膀胱がんの可能性もあります。
特に注意が必要なのは、血尿に加えて体重減少や食欲不振が見られる場合。私のクリニックで先月診た9歳のゴールデンレトリーバーは、血尿を主訴に来院し、検査の結果、膀胱がんが見つかりました。早期発見だったため手術が成功し、現在は元気に過ごしています。血尿を見つけたら、色の濃さや頻度を記録して、できるだけ早く動物病院へ行きましょう。
A: 尿トラブル予防で最も重要なのは「十分な水分摂取」です。私たちが推奨しているのは、1日に体重1kgあたり50-100mlの水を飲ませること。特にドライフードを食べている子は、水分不足になりがちなので要注意です。
私のおすすめは流水式の給水器を使うこと。患者さんの多くが「水を飲む量が増えた」と報告してくれます。また、定期的なトイレタイムも大切。うちのワンちゃんたちには、朝・昼・晩の3回は必ず外に連れ出すように指導しています。適度な運動も排尿を促すので一石二鳥ですよ。
A: 犬が24時間以上尿を出さない場合は緊急事態です。私たち獣医師が最も危惧するのは尿道閉塞で、特にオス犬に多いトラブルです。この状態が続くと、膀胱が破裂する危険性もあります。
私が昨年対応した症例では、3歳のミニチュアダックスが尿道結石で閉塞を起こし、緊急手術が必要になりました。幸い早期に来院したため大事には至りませんでしたが、このような場合は一刻も早く動物病院へ連れて行ってください。在宅でできる応急処置はほとんどありませんので、自己判断せずに専門家の診察を受けることが最善策です。