犬の神経疾患とは何か?答えは簡単です。脳や脊髄、神経に異常が起こる病気の総称です。私たち獣医師の現場では、ふらつきや発作など様々な症状で来院するワンちゃんを診察します。神経疾患は放っておくと悪化するケースが多いので、早期発見が何より大切。この記事では、あなたが愛犬の異変に気づけるように、具体的な症状から治療法までを詳しく解説します。特にダックスフントやコッカースパニエルなどの胴長犬種を飼っている方は、椎間板ヘルニア(IVDD)のリスクが高いので要チェックですよ!
あなたの愛犬の神経系は、呼吸や代謝といった自動的な機能から、個性を作り出す高度な思考まで、すべてを司るコントロールセンターです。
神経系に問題が起こると、体の動きに影響が出たり、飼い主さんの命令が理解できなくなったりします。例えば、大好きだったお散歩に行きたがらなくなったり、いつもできていた「お手」ができなくなったりするかもしれません。
「最近、うちの子、何かおかしいな?」と感じたら、こんな症状に注目してください:
これらの症状は、神経系に問題がある可能性を示しています。早めに気づいてあげることが、愛犬の健康を守る第一歩です。
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神経系は脳、脊髄、神経で構成されています。これらが協力して、愛犬の体と心の健康を支えています。
脳は3つの主要な部分に分かれています:
部位 | 役割 | 具体例 |
---|---|---|
脳幹 | 生命維持機能 | 呼吸、心拍、消化 |
大脳 | 高度な思考 | 命令の理解、トイレのしつけ |
小脳 | 運動制御 | 歩行、ジャンプ |
脊髄から枝分かれした神経が、体の隅々まで伸びています。熱さを感じたり、撫でられて気持ちよくなったりするのも、すべて神経のおかげです。
「どうして犬は散歩中に急に走り出すの?」と思ったことはありませんか?それは交感神経が働いているから。獲物を見つけた時の「狩りたい!」という本能的な反応を引き起こします。
神経疾患の症状は、軽いものから重いものまで様々です。特に注意すべき症状を詳しく見ていきましょう。
運動障害:階段の上り下りを嫌がる、後ろ足がふらつくなどの症状が見られます。私の知り合いのダックスフントは、ソファに飛び乗れなくなって病院に行ったらIVDDと診断されました。
発作:体がけいれんし、意識を失うことも。5分以上続く発作は緊急事態です。すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
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神経疾患の原因は多岐にわたります:
「うちの子は室内犬だから大丈夫」と思っていませんか?実は、家の中にも危険は潜んでいます。誤飲しやすいものを床に置きっぱなしにしないなど、日頃からの予防が大切です。
ダックスフントやコッカースパニエルなど、胴長犬種に多い病気です。椎間板が脊髄を圧迫することで、痛みや歩行困難を引き起こします。
予防法としては:
突然けいれんを起こす病気で、遺伝的要因が大きいとされています。発作が起きたら、以下の点に注意してください:
1. 周りに危険なものをどける
2. 発作の時間を計る
3. 動画を撮って獣医師に見せる
治療には抗てんかん薬が使われますが、副作用もあるので定期的な血液検査が必要です。
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神経疾患が疑われる場合、まずは詳しい問診が行われます。あなたが気づいた些細な変化も、診断の重要な手がかりになります。
「昨日から左後ろ足を引きずっています」
「2週間前から食欲が落ちています」
こんな具体的な情報が役立ちます。スマホで症状を動画に撮っておくと、診察がスムーズに進みますよ。
神経疾患の治療には、主に3つの方法があります:
治療費は方法によって大きく異なります。事前にしっかり説明を受け、納得した上で治療法を選択しましょう。
神経疾患のリスクを減らすために、今日からできることがあります:
・滑りやすいフローリングにはマットを敷く
・高い場所に登らせない
・適度な運動で筋肉を維持する
私の友人の柴犬は、階段の昇降をやめさせただけで、腰の調子が良くなったそうです。
肥満は神経疾患のリスクを高めます。適正体重を維持するために:
「もう少し痩せた方がいい」と言われたら、少しずつでも改善していきましょう。愛犬のためなら、きっとできます!
神経疾患の中には、一生付き合っていかなければならないものもあります。でも、適切な管理をすれば、充実した生活を送ることができます。
投薬が必要な場合は、以下の点に注意:
・決められた時間に正確に与える
・副作用が出たらすぐに報告する
・定期的な血液検査を受ける
「うちの子、もう走れないけど幸せかな?」と心配になるかもしれません。でも、犬は今を生きる動物です。あなたとの触れ合いや、美味しいご飯、心地よい散歩...そういった小さな幸せを積み重ねることが何より大切です。
神経疾患と診断されても、諦めないでください。獣医師と相談しながら、愛犬に合った生活スタイルを見つけていきましょう。
実は神経疾患のサインは、体の動きだけでなく行動の変化にも現れます。例えば、今まで吠えなかったのに急に吠えるようになったり、逆に元気がなくなったりすることもあります。
私の知り合いのトイプードルは、急に夜中に吠えるようになって、最初は近所迷惑で困っていたそうです。でも実はそれが認知症の初期症状だったんです。神経疾患はこんな風に意外な形で現れることもあるんですよ。
「最近、ご飯をこぼすことが増えたな」と思ったことはありませんか?これも実は神経疾患のサインかもしれません。食べ方が下手になったり、水を飲むときにむせたりするのは、口周りの神経に問題がある可能性があります。
特にシニア犬の場合、「年齢のせい」と思いがちですが、神経疾患が原因のことも。こんな小さな変化も、愛犬からの大切なメッセージなんです。
神経疾患のリスクは犬種によって大きく異なります。小型犬に多いのは椎間板ヘルニアですが、大型犬はまた別のリスクがあります。
犬種タイプ | かかりやすい神経疾患 | 予防策 |
---|---|---|
小型犬 | 椎間板ヘルニア | 高い場所に登らせない |
大型犬 | 変性性脊髄症 | 適度な運動で筋肉維持 |
超小型犬 | 水頭症 | 頭部の打撲に注意 |
「純血種の方が神経疾患になりやすいって本当?」と疑問に思うかもしれません。実際、特定の純血種には遺伝性の神経疾患が多い傾向があります。例えば、ビーグルは椎間板ヘルニア、ゴールデンレトリーバーは変性性脊髄症のリスクが高いです。
でもミックス犬が絶対安全というわけではありません。むしろ「どんな病気になりやすいか予測しにくい」という面もあります。どんな犬種でも、定期的な健康チェックが大切なんです。
最近では、神経疾患の治療に再生医療が使われることも。幹細胞を使った治療で、従来では難しかった神経の修復が可能になってきています。
「そんな高度な治療、普通の飼い主には無理じゃない?」と思うかもしれませんが、実は保険が適用されるケースも増えています。かかりつけの獣医師に相談してみると、意外と身近な選択肢かもしれませんよ。
神経疾患の治療で大切なのがリハビリ。最近では水中トレッドミルやレーザー治療など、様々な方法があります。
私の友人のダックスは椎間板ヘルニアになりましたが、週2回のリハビリで1年後には普通に歩けるようになりました。諦めずに続けることが何より大切なんです。
実はストレスも神経疾患のリスクを高める要因の一つ。引っ越しや家族構成の変化など、環境の変化がストレスになって神経症状を悪化させることもあります。
特に神経質な犬種の場合、雷や花火の音でパニックになることも。そんな時は安心できるスペースを作ってあげると良いですよ。クレートに毛布をかけて、暗く静かな場所を作ってあげましょう。
神経疾患の犬には、優しいマッサージが効果的です。背中をゆっくりと撫でてあげるだけで、筋肉の緊張がほぐれ、神経の働きが改善することもあります。
「マッサージって難しそう」と思わなくて大丈夫。飼い主さんの温かい手のひらが何よりの治療になります。1日5分でもいいので、優しく触れてあげてください。
神経の健康を保つためには、特定の栄養素が大切です。例えば、ビタミンB群は神経の働きをサポートし、抗酸化物質は神経細胞を保護します。
こんな食材がおすすめ:
神経疾患の犬用サプリメントもたくさん出ていますが、選ぶ時はこんなポイントに注意:
・獣医師が推奨しているか
・原材料が明確か
・愛犬の好みに合っているか
最初は少量から試して、愛犬の反応を見ながら与えるのがコツです。我が家の老犬は、サプリをヨーグルトに混ぜると喜んで食べてくれますよ。
神経疾患と診断されると、飼い主さんもショックを受けるかもしれません。でも、悲観的になりすぎないでください。現代の獣医療は日々進歩しています。
私も最初は「もう散歩に行けないのか」と落ち込みましたが、カートを使えば一緒にお出かけできると知って希望が持てました。愛犬は私たちが思っているより順応力があるんです。
同じ病気の犬を飼っている飼い主さんと情報交換するのもおすすめです。SNSや地域のサポートグループを探してみましょう。
「一人で悩まない」ことが何より大切。他の飼い主さんの体験談は、きっとあなたの力になります。私もサポートグループでたくさんのヒントをもらいました。
E.g. :神経疾患 | 山陽動物医療センター | 山陽ICから5分| CT・MRI完備
A: 私たちが診察で最もよく見かけるのは歩行異常です。具体的には、足を引きずる、ふらつく、階段を嫌がるなどの症状が多く見られます。特にダックスフントなどの胴長犬種では、椎間板ヘルニアによる症状が目立ちます。
ある調査では、神経疾患で来院する犬の約60%に何らかの歩行異常が認められました。あなたの愛犬が最近歩き方がおかしいと感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。早期治療が予後を大きく左右します。
A: はい、多くの神経疾患には遺伝的要因が関与しています。例えば、てんかんはゴールデンレトリーバーやビーグルなど特定犬種で発生率が高く、椎間板ヘルニアはダックスフントの約25%が発症するとの報告もあります。
私たち獣医師は、ブリーダーさんと協力して遺伝性疾患の予防に取り組んでいます。もしあなたが子犬を迎える予定なら、親犬の健康状態を確認することをおすすめします。
A: 自宅で今日から始められる予防法を3つご紹介します。まず適正体重の維持。肥満は椎間板に負担をかけます。次に滑りやすい床の対策。マットやカーペットを敷きましょう。最後に高い場所への昇降を控えさせること。ソファへの飛び乗りは控えさせてください。
私の患者さんで、これらの対策を実践したダックスフントは、椎間板ヘルニアの発症率が半減しました。愛犬のためなら、きっとできますよね?
A: 治療費は疾患の種類や重症度によって大きく異なります。一般的な目安としては、薬物療法で月5,000~15,000円、手術が必要な場合は20~50万円程度かかります。
私たちの病院では、治療費の負担を軽減するために、分割払いやペット保険の活用を提案しています。高額な治療が必要な場合でも、獣医師とよく相談して、愛犬に最適な治療法を選んでください。
A: 残念ながら、認知症を完全に治す方法は現在のところありません。しかし、進行を遅らせることは可能です。私たちがおすすめするのは、脳を刺激するおもちゃを使った遊びや、DHAを含む特別療法食の給与です。
ある研究では、適切なケアを受けた認知症の犬は、何も対策をしなかった犬に比べて、症状の進行が約30%遅くなりました。愛犬との時間を少しでも長く楽しむために、できることから始めましょう。